守護神と破壊者の顔を持つ太陽系の王者、木星

  • 2026/01/12
  • 太陽系
木星の2つの顔

今年の2026年の1月10日は、太陽系の最大惑星、木星の「衝(ショウ)」でした。
「衝」とは、太陽、地球、木星が一直線に並び、木星がもっとも明るく見える事象です。

さて、この木星、「太陽系の中で一番大きな惑星で縞模様がある」という印象が一般的ですが、その正体は、「守護神」の顔と「破壊者」の顔を合わせ持つ、頼もしく恐ろしい巨大惑星でした。

目次

– 木星の基本情報
– 地球の守護神であり、破壊者でもある木星
– 個性的なガリレオ衛星たち
– 衝の木星

Amazon広告
Amazon広告

木星の基本情報

木星の基本情報
Nano Banana generates

まず、木星の基本情報からご紹介します。
木星の直径は地球のおよそ11倍。体積で言うと、もう地球が1000個以上すっぽり入ってしまう計算になります。質量は地球の約318倍で、これは太陽系の木星以外の惑星すべての質量を足したものの倍以上です。もし木星の質量が現在の質量の約13倍以上あったなら、恒星と惑星の中間である「褐色矮星」となっていた可能性があります。

中心部で核融合反応を起こして燃え続けているのが恒星で、恒星になるためには、圧倒的な質量(重さ)が必要となります。

大気の下はSFの世界

降下する宇宙船
木星を降下する宇宙船のイメージ
Nano Banana generates

そして、木星の内部は私たちの常識が全く通用しない、本当に奇妙な世界が広がっています。
木星には「地面」というものがありません。
もし木星に降りてくことが可能な宇宙船があったとして降下していった場合、どこまで下っても明確な地面には辿り着けず、猛烈な熱と圧力で潰され、船もろとも溶かされてしまいます。

木星は水素とヘリウムが主成分の、いわゆるガス惑星であるため、上空から内部に降りていくと、気圧と温度が凄まじい勢いで上がっていきます。この過程で水素が液体に変わります。
つまり、分厚い大気の延長に、果てしない水素の海が広がっているというわけです。

Blog pic
木星の磁場
Nano Banana generate

中心部の温度は2万度、気圧は地球の数百万倍という、とてつもない極限状態であるため、
水素が原子レベルでギュウギュウに圧縮され、電子が自由に動き回れるようになり、電気を通す「金属水素」という物質に変化するのです。
そして、この金属水素が対流することで、木星の強力な磁場が生み出されるのです。

Amazon広告
Amazon広告

大赤斑の正体

大赤斑
大赤斑 Freepik

大赤斑は地球が2個以上すっぽり入るほどの大きさで、正体は巨大な高気圧性の渦です。
風速は時速400キロメートルを超え、この驚異的な巨大ハリケーンが300年以上続ています。
地球のハリケーンは陸地に上がるとエネルギー源を失い消えますが、地面のない木星では勢いを失うことなく、さらに木星の内部から湧き上がってくる熱をエネルギー源としているため衰えることがないのです。

美しい縞模様の正体

Blog pic
木星の縞模様
写真AC

嵐は大赤斑だけではなく、木星全体を覆う、あの美しい縞模様も実は巨大な嵐の帯なのです。
木星はたったの10時間で自転します。この高速回転が生み出すコリオリの力で、緯度ごとに猛烈なジェット気流を生み出し、東向きと西向きに交互に吹き荒れ、これがあの美しい縞模様を作るのです。

Amazon広告
Amazon広告

地球の守護神であり、破壊者でもある木星

ヤヌス神
2つの顔を持つヤヌス神
Nano Banana generate

木星は「地球の守護神」という面と、同時に恐竜を絶滅させたかもしれない「破壊者」でもあると面の2つの顔を持っています。

木星は圧倒的な質量による強大な重力を持っています。
強大な重力があることで、木星はボディガードのように、地球に衝突する軌道を持つ小惑星や彗星などの危険な天体を、その重力で引き寄せて自分に衝突させたり、あるいは軌道を変えて太陽系の外へ弾き飛ばして、地球を守っています。

衝突痕
木星に残った衝突痕
出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』

木星への彗星の衝突率は、地球の数千倍です。
ボディガードの役割を私たちが目の当たりにしたのは、1994年のシューメーカー・レヴィ第9彗星と木星の衝突でした。この彗星は木星の重力に捕らえられて、20個以上に分裂し、数日間にわたって次々に木星に激突しました。その衝突痕が地球と同じくらいの大きさになり、話題になりました。

恐竜絶滅
illustAC

しかし、物事には裏表があります。
木星は守護神であると同時に破壊者でもあります。
木星の重力は、地球に向かう天体を逸らしてくれることもあれば、逆に、本来は安全な軌道にあった小惑星帯の天体を軌道を乱して、地球のある内太陽系へと弾き飛ばしてしまうこともあります。
この代表的な例が、6500万年前に恐竜を絶滅させた小惑星の衝突です。
まるで気まぐれなスナイパーです。

Amazon広告
Amazon広告

個性的なガリレオ衛星たち

Blog pic
Nano Banana generates

木星自体がカリスマ性を持った主役ですが、脇役である衛星たちもとんでもなく個性的です。
1610年にガリレオ・ガリレイが見つけた4つの衛星。
イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト。いわゆるガリレオ衛星です。
ガリレオがこれらを見つけた時代はすべての天体が地球の周りを回っているという天動説が常識でしたので、木星の周りを回る星の発見は、まさに歴史を覆す大発見でした。

ガリレオ衛星
木星とガリレオ衛星
出典:WIKIBOOKS

現在では95個以上の衛星が見つかっていますが、この4つは特にユニークです。
木星に近い衛星からその特徴を上げていきます。

怒れる火山衛星、イオ

まず、木星に一番近いイオ。
太陽系で最も火山活動が活発で、地球の火山の数百倍のエネルギーが常に放出されています。
木星の強大な重力と、他の衛星からの重力によって、イオの内部は粘土をこねるように絶えず混ぜられておりその摩擦熱で岩石が溶け、地表の至る所から硫黄などを含む火山ガスが高さ数百キロメートルまで噴き上がるのです。
地獄のような光景です。

生物の可能性を秘めた氷の惑星、エウロパ

イオとは対照的なのが二番目のエウロパです。
こちらは氷の世界で、滑らかな氷の地殻で覆われていて、その下に、地球の海をすべて合わせたよりも多くの水が存在する、広大な液体の海が広がっていると考えられています。
「もしその海の底に、地球の深海にあるような熱水噴出孔があれば、太陽の光が届かなくても、化学エネルギーを利用して生きる生命体がいるかもしれない」と地球外生命探査の最も有力な候補の一つとして、世界中が注目しています。

Amazon広告
Amazon広告

太陽系最大の衛星、ガニメテ

三番目のガニメデは、太陽系で一番大きな衛星です。
惑星である水星よりも大きいのです。
そして衛星でありながら、固有の磁場を持っています。
これは中心部に液体の金属核がある証拠で、もはや惑星と呼んでも差し支えないほどの天体です。

太古の化石衛星、カリスト

そして最後がカリスト。無数のクレーターに覆われていて、太陽系で最も古い表面を持つ天体です。40億年以上も昔の、太陽系が誕生したばかりの頃の激しい衝突の歴史をそのまま刻み込んだ、太古の化石のような衛星です。

この4つの衛星は、それぞれが惑星の進化の多様な可能性を示していて、木星を探ることは第2の地球を探すためのヒントにもつながります。

衝の木星

太陽地球木星の位置
衝の時の地球と木星の位置

さて、ここまで木星の壮大な物語を紐解いてきましたが、この太陽系の王者を最高の条件で観測するチャンスがあります。それが衝です。

衝は満月と同じ原理で、太陽の光を正面から全身に浴びるので、最も明るく見えます。
さらに、地球との距離も一番近くなるため、見かけの大きさも最大になります。
そして何より、一晩中観測できるのが大きなメリットです。

衝というのは、惑星が地球を挟んで太陽と一列になる時のことで、2026年1月は太陽が西に沈むのとほぼ同時に、木星が東の空から昇ってきます。そして真夜中に南の空の高い場所まで昇り、明け方に太陽が昇る頃、西の地平線に沈んでいくのです。

2026年1月の衝の木星

木星の位置
木星の位置(20時頃)

1月26日16時40分に木星が東から昇るとともに、火星や金星が西に沈んでいきます。18時31分、木星が衝となります。そして23時48分に南の空で最も高くなります。この時は地上の大気の影響を最も受けにくくなるため、望遠鏡で縞模様などをじっくり見るなら、まさにこの時間帯が狙い目です。
もちろん肉眼でも圧倒的な光として楽しめます。

Blog pic
望遠鏡で見た木星とガリレオ衛星
AdobeStock

双眼鏡や望遠鏡で木星を見ると、単なる光の点ではなく、ちゃんと円盤状に見えます。
そして、木星のそばに寄り添うように輝く4つの小さな光の点が見えます。
これが前述のガリレオ衛星たちです。数時間観測を続けていると、この衛星たちが木星の周りを動いて、位置を変えていくのがはっきり分かります。
まるで宇宙の時計の針が動くのをリアルタイムで見ているような、感動的な光景が広がります。

時間旅行
Nano Banana generates

実はこの瞬間リアルタイムで見ている木星の光は、実は33分前の過去の光です。
木星は地球から約6億キロメートル離れており、光は約33分かけて地球に届くのです。
宇宙を眺めるというのは、時間旅行をすることでもあります。