千載一遇の邂逅、しぶんぎ流星群

  • 2026/01/03
  • 銀河系
しぶんぎ流星群

夜空を見上げて流れ星に願い事をする。
ロマンチックな一瞬です。 ところで、流れ星の正体について考えたことはありますか?
今回はまず、なぜ流星群が毎年きっかり同じ時期に現れるのか、その秘密に迫ります。

目次

– 流星群の正体は彗星の軌跡
– 毎年同じ時期に流星群が見える理由
– 彗星の故郷、カイパーベルト
– 今は存在しない幻の星座「しぶんぎ座」
– 流れ星に見る太陽系の歴史と天文学者の情熱

流星群の正体は彗星の軌跡

地球の脇を通過する彗星
地球の脇を通過する彗星
AdobeStock

太陽系の最果て、カイパーベルトから彗星が太陽に向かって進んできます。
彗星が太陽に近づくにつれて、強烈な太陽エネルギーを受け、表面の氷がガスになります。そして、内部に閉じ込められていた大量の塵と一緒に、宇宙空間へと吹き出します。 これがあの夜空に見える彗星の美しい尾になるわけです。

ガスが作るイオンの帯と、塵が作るダストの帯。 これがあの雄大な2本の帯の正体です。
そして目に見える帯とは別に、塵がこぼれ落ちるようにして彗星が通った軌道上に残されていきます。 軌道上に残された塵は、長い時間をかけて軌道全体に広がり、「塵の帯」になります。

地球軌道と彗星軌道の交差
©devcosmo.biz

地球の軌道とこの塵の帯が交差する時、地球は塵の帯の中に突っ込んでいくことになります。
「突っ込んでいく」と聞くと、隕石のようなものが落ちてくる不安に駆られますが、塵の帯にある塵たちは、ほとんどが直径1ミリ程度の砂粒サイズなのです。
これが、地球の大気に秒速数十キロメートルという猛スピードで突入し、大気の分子と激しく衝突してプラズマになって光を放ち、流れ星となります。 つまり、塵そのものが燃えているのではなく、塵が大気を光らせているのです。

プラズマとは
プラズマとは、固体・液体・気体に続く物質の第4の状態で、気体にエネルギーが加えられることで原子や分子が電離し、イオンと電子が混在する状態になること。

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毎年同じ時期に流星群が見える理由

三大流星群

流星群が毎年同じ時期に見えるのは、地球の公転軌道と塵が残した帯が交差する点が、宇宙空間で決まっているからです。 彗星の軌道上にばら撒かれた塵は、やがて軌道全体に広がって、細長いチューブのような状態になります。
地球は年に一度、太陽の周りを回る中で、必ずこのダストチューブを突き抜けます。
これが毎年恒例の流星群になるわけです。

・1月:しぶんぎ座流星群
・8月:ペルセウス座流星群
・12月:ふたご座流星群


これらは、それぞれ違う彗星が作ったダストチューブと、地球の公転軌道との交差による現象です。

彗星の故郷、カイパーベルト

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カイパーベルト

彗星そのものは、カイパーベルトからやってきます。 カイパーベルトは、海王星の軌道のさらに外側。太陽からおよそ30から50天文単位の距離に広がる領域です。 1天文単位が地球と太陽の距離、約1億5000万キロですので、その30倍以上も遠く、太陽の光もほとんど届かない、マイナス200度以下の極寒の世界です。

流れ星は、もしかしたら46億年間、太陽系の果てで凍っていた物質のかけらなのかもしれません。
カイパーベルトは「太陽系のタイムカプセル」と呼ばれます。 太陽系が誕生した約46億年前、惑星になりきれなかった物質が太陽から遠く離れた場所でずっと凍ったまま、当時の姿を保っているからです。 一見、火星と木星の間にある小惑星と似ているように思えますが、小惑星の成分が岩や金属であるのに対し、カイパーベルトの天体の成分は、水やメタン、アンモニアといった揮発性の高い氷を豊富に含んでいます。 これを調べることで、地球に水や生命の材料をもたらしたのがこうした天体だったのではないか、という仮説の検証にも繋がるのです。

冥王星
冥王星 iStock

しかし、カイパーベルトは観測するのが難しく、最初の天体が見つかったのが1992年と、ごく最近です。 そしてその姿を初めて間近で見たのが、2015年に冥王星に到達した探査機「ニュー・ホライズンズ」でした。 冥王星には、窒素の氷でできた巨大なハート型の氷河があり、今も活発に活動しています。 他にも雪だるまのようなユニークな形をした天体も見つかっています。

また面白いのが、カイパーベルト天体の多くが海王星の重力の影響を受けて、お互いが衝突するのを防いでいるということです。 例えば冥王星は海王星と「軌道共鳴」という関係にあります。 冥王星が太陽の周りをちょうど2周する間に、海王星がぴったり3周するという、非常に安定したリズムを刻んでいます。 一見、軌道が交差しているので衝突しそうに見えますが、この完璧なリズムのおかげで、お互いが近づく時には必ず遠い場所にいて、決して衝突しないのです。
幻想的でありながら、同時に非常に厳格な物理法則に支配された世界です。

軌道共鳴とは?
2つ以上の天体が互いの重力の影響で周期的に力を及ぼし合い、軌道が変化する現象です。

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今は存在しない幻の星座「しぶんぎ座」


そもそも「しぶんぎ座」は、現在の88星座には存在しません。 18世紀の終わりにフランスの天文学者ジェローム・ラランドが設定した星座ですが、「しぶんぎ」というのは、ラランドが天体観測で愛用していた「壁面四分儀(へきめんしぶんぎ)」という道具のことです。 円を4分の1にした扇形で、目盛りがついていて、天文学者たちはこれを使って星の高度を正確に測っていました。つまり、自分の愛用道具を星座にして、夜空に刻んでしまったというわけです。 当時は、天文学のパトロンである王様を称えたり、自身の功績を残したりするために、新しい星座を作ることが一種の流行でした。
当時の星図は、いわば天文学者たちの自己表現の場だったのです。

あまりに星座が乱立して収拾がつかなくなったため、1922年に国際天文学連合(IAU)が、全天の星座を88個に整理統一することを決定しました。 その際に、歴史的な経緯や神話との関連が薄い多くの新しい星座は残念ながら採用されず、しぶんぎ座もその領域が現在のうしかい座やりゅう座の一部となり、星図から姿を消したのです。

それでも、「しぶんぎ座」は流星群の名前として残りました。 かつて放射点があった領域から流れる流星群の名前として、「しぶんぎ座流星群」という呼び名が慣習的に使われ続けていたからです。 そして2009年、IAUがその歴史的経緯を尊重し、この流星群の学術的な名称としてQuadrantids、つまり「しぶんぎ座に由来するもの」という名前を正式に認めました。

千載一遇の観測チャンスと観測方法

流星群
流星の降る夜
AdobeStock

2026年1月のしぶんぎ座流星群の観測ピークは、1月4日の日曜日、日本時間の午前1時~5時頃です。
ただ、この流星群は活動が活発な時間が極端に短いため、観測時間は数時間ほどしかありません。しぶんぎ座流星群のダストチューブは非常に細くて濃いため、地球がそこをあっという間に通り過ぎてしまうのです。

そして今年の観測にはもう一つ、問題があります。 今年のピークは満月の翌日に当たり、流星を見るには月が明るすぎます。 人間の目は暗闇にいると瞳孔が開いて感度が数千倍にも上がりますが、これだけ強い光源があると、目の順応が全く進まず、結果として、かなり明るい火球クラスの流星しか見えなくなってしまいます。

星観測
北斗七星→うしかい座→りゅう座を見つける

この過酷な環境でも、なお、しぶんぎ流星群を見るとしたら、以下の手順で観測を行います。

1. 観測可能な時間帯に北北東の方角を見る。
2. 北斗七星を探す。
3. 北斗七星のひしゃくの持ち手の延長上に、左にりゅう座、右にうしかい座を探す。
4. 放射点は、りゅう座とうしかい座の境界にあるため、放射点を中心に空全体を眺める。


流星は放射点から四方八方に流星が飛び出してきますが、流星は空全体に現れるため、放射点だけをじっと見るのではなく、視野を広く保ちながら空全体を眺めるようにします。

そして、最も重要なのは「視界に月が入らないようにすること」です。
建物や山の陰に月を隠すなど、工夫します。 期待できる数としては、最高の条件なら1時間に20個から30個ですが、今年は1時間に数個見えれば幸運、と考えておいた方がいいかもしれません。

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流れ星に見る太陽系の歴史と天文学者の情熱

「夜空にきらめく一筋の光が、実は太陽系の果てで46億年眠っていた氷のかけらで、その故郷は海王星の重力に操られるダンスフロアのような場所だった。 そしてその光の名前は、18世紀の天文学者が自分の道具を自慢するために作った幻の星座の物語に繋がっていた。」
なんともダイナミックでロマンティックな物語です。

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しぶんぎで星を観測する科学者たち

もし夜空の下で流れ星を目にしたら、そこには太陽系が生まれた瞬間の記憶を運んできた宇宙の化石の最期の輝きと、星空に自分の夢を刻もうとした一人の天文学者の情熱、そして一度は消えた名前が復活した数奇な運命、その全てが凝縮されているのです。