天王星と天空の神ウラヌスの神話
今日は天王星についてお話します。
太陽系の惑星といえば、スペースX マース・プランで注目を集めている火星や美しい環を持つ土星がまず思い浮かぶことでしょう。 実は土星より天王星のほうがずっと興味深く、私たちの住む地球と密接な関係にある惑星なのです。
天王星の基本情報
氷の巨人は体重が軽い
ではまず、天王星の基本情報をお話しましょう。
天王星は太陽系の第7惑星で、太陽からの距離は、太陽から地球までの距離の20倍にあたり、太陽系の端にある惑星といってもおかしくありません。直径は地球の約4倍、体積は約63倍もあり、非常に巨大な惑星です。ただし、その巨大な体積に対して質量は小さく、地球の約14.5倍しかありません。
見た目の大きさに対して体重が軽い。まるでアニメ「進撃の巨人」に出てくる巨人たちのようです。
進撃の巨人に出てくる巨人たちの体は全体の大きさに対して質量が小さく、巨人の頭は人間が片足で蹴り飛ばせるほど軽いのです。そして、死ぬと巨体が蒸発して無くなります。天王星のあだ名は氷の巨人ですが、なるほど名が体を表しているわけですね。
天王星が軽い理由は、構成している物質にあります。氷と岩石でできた核があり、マントルはアンモニアとメタンが混じった氷でできています。地層はヘリウムとメタンを含む水素ガスでできており、表面はアンモニアとメタンの大気で覆われています。つまり、天王星は巨大な風船のような惑星なのです。そして、メタンが赤い光を吸収するため、表面の色が緑かかった青色なのです。
名前の由来 最後は家族のもとに
天王星は、1781年にイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルによって発見され、ドイツの天文学者ヨハン・ボーデによって「ウラヌス」と名付けられました。ウラヌスはギリシア神話の天空の神で、神々の王、ゼウスの祖父にあたります。ゼウスはローマ神話ではジュピターで、木星の英語名です。ウラヌスの息子であり、ゼウスの父であるクロノスはローマ神話ではサターンで、土星に名付けられました。
ゼウスの祖父であるウラヌスが本来、一番大きい木星になるべきでは?と思う人がいるかもしれません。これには理由があるのです。まず、天王星が見つかる随分前から木星の存在が人々に知られていたこと、祖父と父、父と息子はそれぞれ敵対関係にあったこと、最終的に父を倒したゼウスが神々の王となったことがこの背景になっています。
ウラヌスはクロノスに「お前もわたしと同じ運命を辿るだろう」と言い残して去っていきました。その予言どおり、クロノスも息子ゼウスと戦い、奈落の底に閉じ込められてしまいます。
追放されたウラヌスと奈落の底に幽閉されたクロノスが、今ではゼウスと並んで空に上がって
いるのは何とも喜ばしいことです。やはり家族は仲良く一緒にいるのが一番ですね。
ユニークな自転軸と13の環
横倒しの自転軸
天王星の自転軸は、太陽系の平面に対して98度傾いているため、ほぼ横倒しで公転しています。
公転周期が84年ですから、昼と夜がそれぞれ42年続きます。仮に天王星で人が生まれたとしたら、42才になるまで昼を過ごし、残りの人生は夜を過ごすというわけですね。天王星が横倒しになった理由ははっきりと解明されていませんが、ひとつには、太陽系が若い時期に地球サイズの天体が複数回衝突したためと言われています。
13の環
天王星がユニークなのは横倒しの自転軸だけではなく、13の環があります。土星のようなきらめく華や
かな環ではなく、目立たないシンプルな細い環です。
環が目立たない理由は、環が氷と暗い物質でできているためです。土星の環のように、水の氷でできていれば太陽の光を反射してきらきらと光り、発見が容易なのですが、暗い物質で構成されていると発見自体が難しいのです。
天王星はシンプルなネックレスを首にかけて、太陽に向かって98度の角度でお辞儀をしながらゆっくりと回っていることになります。意外な奥ゆかしさを感じますね。
まとめ
・巨大な氷惑星だが、体積に対して質量が小さく軽い。
・氷と岩石、アンモニア、メタン、ヘリウムでできている。
・大気に赤い光を吸収するメタンを含むため、表面は緑かかった青色。
・1781年にイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルによって発見された。
・ドイツの天文学者ヨハン・ボーデによって「ウラヌス」と名付けられた。
・自転軸が横道に対して98度傾いており、横倒しで公転している。
・13の環を持っているが、暗い物質でできているため見つけにくい。