太陽系の風雲児 海王星
今回は太陽系のアンカー惑星、海王星についてお話します。
2006年まで太陽系のアンカーは冥王星でした。エッジワース・カイパーベルトに冥王星と同等の準惑星が見つかったことにより、冥王星は準惑星となりました。こうしてアンカーを務めることとなった海王星は、意外にも活発な大気活動を持つ変化に富んだ美しい惑星でした。
海王星の基本情報
ニュートン力学が位置を突き止めた惑星
海王星は、天王星と同じく水、メタン、アンモニアの氷でできた巨大な氷惑星です。 海王星という名前にふさわしく、青く美しい外観を持っていますが、海があるわけではありません。 惑星の内部は氷と岩石で構成されており、大気は水素、メタン、ヘリウム、それと微量の炭化水素と窒素で構成されています。海王星が青く見えるのは、大気中のメタンが太陽からの赤い光を吸収し、青い光を反射するからです。
ところで海王星が計算によって発見されたことを知っていましたか?
1781年イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルが天王星を発見しました。その後、天文学者たちが天王星を観測しているうちに、軌道におかしな動きがあることがわかりました。天文学者たちは天王星の近くに影響を与える大きな天体があると推測しました。しかし、この天体を当時の望遠鏡で発見することは不可能だったのです。このため、1846年に2人の天文学者が計算で位置を特定しました。位置を計算した天文学者は、フランス人のユルバン・ルヴェリエとイギリス人のジョン・クーチ・アダムズです。
ただし、アダムスとルヴェリエが共同でこの計算を行ったのではなく、お互い別々に研究を行っていました。アダムスは天文台に数式を伝えましたが、その後取り上げられることはありませんでした。ルヴェリエはベルリン天文台のヨハン・ガレに手紙で数式を伝え、ガレは手紙に書かれた数式をもとに海王星の位置を特定し、望遠鏡を使って海王星を見つけました。
アダムス、ルヴェリエ、ガレ。この3人の天文学者がニュートンの法則を用いて、海王星を発見したのです。
名前の由来 太陽系の風雲児
海王星の英語名はローマ神話の海の神ネプチューンです。ネプチューンはギリシア神話ではポセイドンになります。海王星の青い色が美しく広大な海を連想させるため、木星ジュピター(ゼウス)の兄にあたる海の神ネプチューンの名前が採用されました。
海の神ポセイドンはクロノスとレアから生まれた神で、ゼウスの兄にあたります。神々の戦いで勝利したゼウス兄弟は支配権を決め、ポセイドンは海を支配することとなりました。ポセイドンは三叉の矛(トリアイナ)を使って嵐や津波、地震などを自在に操ります。 彼の気に障ることを人間が行うと、凄まじい地震や洪水が報復として与えられました。
暴風吹き荒れる大気
性格の荒々しさは名前の由来だけにとどまらず、海王星の大気にも表れています。 海王星の大気は水素、ヘリウム、そして微量のメタンで構成されており、表面付近の平均気温は約-214℃の極寒の惑星です。
さらに大気には強力な暴風が吹き荒れていて、その速度は時速2,000キロメートルに達することもあります。地球上で記録されたもっとも速い風速はサイクロン・オリビアの時速約408キロメートルですが、これと比べると海王星の風速がいかに速いのかがわかります。
しかし、太陽からの距離が地球の30倍もあり、太陽光が地球の1/900ほどしかない海王星の大気でなぜこんな活発な気象現象が起きるのでしょうか?
これには、いくつかの原因が考えられています。
まず、海王星が内部から大量の熱を放射していることが原因のひとつと考えられます。
重力収縮によって作られた熱や海王星が形成された時期に生じた熱が今でも残っていていて、これらの内部熱が大気を暖め、対流を引き起こしているのです。
また、海王星の自転速度が非常に速いのも起因しています。 海王星の直径は49,244キロメートル以上あり、地球の約3.9倍もあります。しかし自転速度は地球より速く一日は16時間です。自転速度が速いと強力なジェットストリームが生まれ、これが大規模な嵐を作ることになります。
そして大気に温室効果を引き起こすメタンが含まれていることも原因です。 メタンの温室効果が大気を暖め、それが対流を生む原因になっているのです。
このように海王星は太陽系の最果てにありながら、今でも活発な気象現象が起きています。
まさにオリンポス神々の暴れん坊、ポセイドン(ネプチューン)が星となって太陽系で大暴れしているわけですね。