【冬の夜空の主役】オリオン座の魅力に迫る!
夜空の中心に三つの星が等間隔に並び、全体が大きな砂時計のような形を描く――。
冬の星座の王様、オリオン座。古代ギリシャの天文学者プトレマイオスが定めた「48星座」の一つであり、世界中で最も親しまれている星座と言っても過言ではありません。
冬の夜空のコンパス、そして「ダイヤモンド」

オリオン座の最大の特徴は、なんといってもその圧倒的な明るさです。 全天に21個しかない「一等星」を、赤いベテルギウスと青白いリゲルの2つも備えています。さらに二等星が5つもあり、都会の明るい空でも簡単に見つけることができるため、他の星を探すための「夜空のコンパス」の役割を果たしてくれます。

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そして、ベルトにあたる三つ星の並びを南東の方向に伸ばしていくと、ひときわ明るく輝く星が見つかります。これが、おおいぬ座のシリウスです。地球から見える恒星の中では、太陽を除けば一番明るい星です。シリウスとオリオンの肩で赤く光るベテルギウス、そしておおいぬ座の傍にいるこいぬ座のプロキオン。この三つを結ぶと「冬の大三角」になります。

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さらに、ベテルギウスを中心に、足元のリゲル、今見つけたシリウスとプロキオン、さらにふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、これら6つの一等星を結ぶと、夜空に「冬のダイヤモンド」が浮かび上がります。
このように、オリオン座一つ知ってるだけで、冬の夜空の楽しみ方が一気に広がります。
オリオン座にまつわる2つの神話
この星座には、対照的な2つの物語が語り継がれています。
傲慢な狩人の物語

by Nano Banana
勇猛果敢な狩人であったオリオンは、「地上の獲物はすべて自分のものだ」と豪語しました。その慢心に怒った大地の女神ガイアは、巨大な蠍を送り込みます。オリオンはその毒針によって命を落としましたが、彼の勇姿を惜しんだ大神ゼウスが、天に上げて星座にしたとされています。
今でもオリオン座は、さそり座が昇ってくると逃げるように沈んでいきます。
月の女神との悲恋

by Nano Banana
月の女神アルテミスとオリオンは恋仲でしたが、それを快く思わない兄アポロンは、ある策略を巡らせます。遠くの海を泳ぐオリオンの頭を指差し、「あれを射抜けるか」と弓の名手であるアルテミスを挑発したのです。彼女は見事に標的を射抜きますが、それが愛する人だったと知り、嘆き悲しみます。その姿を哀れんだゼウスが、彼を星へと変えたのです。
どちらの神話も悲劇なのですが、その分オリオンに親近感を感じます。
オリオン座を構成する星たちの物語
オリオン座を構成する星たちは、ただ偶然そこに集まったわけではありません。
終焉を迎えつつある巨星「ベテルギウス」
ベテルギウスは終焉を迎えつつある老境の恒星で「赤色超巨星」という種類に分類されます。直径は太陽の700倍以上もあり、ベテルギウスを太陽系の中心に置いくと、直径が木星の軌道と同じくらいになります。不思議なのは、年齢はわずか1,000万歳で太陽の46億歳と比べたら、青年です。これほど若いのに、もう人生の終焉を迎えているのです。

出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』
これには理由があります。ベテルギウスは生まれた時の質量が太陽の20倍と、非常に大きかったため、中心部での核融合反応が激しく、エネルギーを猛烈な勢いで消費するのです。
まさに「太く短く生きる星」の典型で、例えるなら、燃費がものすごく悪い巨大なスポーツカーのようなものです。

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形も完全な球ではなく、少し歪んでいることが観測からわかってます。表面では、巨大なガスの塊がまるで沸騰するようにボコボコと動いています。そしてそんな老人ベテルギウスの最後は、超新星爆発です。超新星爆発を起こすと、その輝きは凄まじく、地球から見るベテルギウスは満月と同じくらいの明るさになると予想されています。そして、もうひとつの満月となったベテルギウスは数週間にわたって空に輝き、昼間でもその輝きが見えることしょう。
そしてその光は数年かけてゆっくりと暗くなり、やがてオリオン座の左肩からベテルギウスの姿は永遠に消えてゆきます。この爆発が明日起きるか、1万年後かは誰にもわかりません。
若々しいリゲル

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一方で、ベテルギウスの対角線で青白く輝くリゲル。こちらは「青色超巨星」で、若くて非常に高温な星です。太陽の12万倍以上の凄まじいエネルギーを放っています。
約860光年とベテルギウスよりさらに遠くにあるのに、これだけ明るく見えるのはそのためです。

ところで、星座にある星は、明るい順にアルファ、ベータとギリシャ文字をつけていきますが、
ベータ星のリゲルのほうが、アルファ星のベテルギウスより実際には明るいのは何故でしょう?
理由はベテルギウス自身が「変光星」で、明るさが周期的に変わるからなのです。
そして、リゲルは一つの星ではなく、4つの星がお互いの周りを周り合っている「多重連星」です。
私たちが夜空に見ているリゲルの輝きは、これら複数の星の光が混ざり合った結果です。
宇宙のゆりかご「オリオン星雲」と「馬頭星雲」
オリオン座には、星が死にゆく姿だけでなく、新しい命が芽生える場所もあります。
それが星雲です。
オリオン大星雲(M42)

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オリオンのベルトをかたどる三つ星の下に目を移すと、ぼんやりかすんで見える部分があります。
ベテルギウスが星の死の舞台なら、こちらは星の誕生の舞台で、宇宙のゆりかごと呼ばれます。
ここには「オリオン大星雲、M42」があります。
地球から約1,300光年、巨大な水素ガスや塵が集まった雲で、その中に新しい星が次々と生まれている「星の工場」です。
星雲の中心部には「トラペジウム」と呼ばれる、生まれたばかりの非常に高温で若い星々がいます。
この星たちが放つ強烈な紫外線が、周りのガスを照らし出して電離させることで、色鮮やかな輝きを生み出しているのです。ここは、未来の太陽系が今まさにそこで産声を上げている現場、と言えます。

出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』
ところで、この星雲まだわかってない謎があります。それは「未解明の赤い輝き」です。
通常、星の色はそこに含まれる元素で決まっていて、水素なら赤、酸素なら青緑といった特徴的な光を放つのですが、オリオン大星雲で観測されるある種の赤い光は、水素が出す光とは異なる波長のパターンがあるのです。この謎については1980年代からずっと研究が続いていますが、まだ正体はわかっていません。
宇宙の影絵「馬頭星雲」

出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』
ベルトの三つ星の東側にあるアルニタク星のすぐ近くにも星雲があります。これは「暗黒星雲」に分類されます。
昔は宇宙にぽっかり穴が開いてる場所だと思われいましたが、実際はその逆で背景に広がる明るい星の光を、手前にある非常に密度の濃いガスと塵の塊が遮断している状態なのです。いわば「宇宙の影絵」ですね。
濃い雨雲が太陽を隠して黒く見えるのと全く同じ原理です。
何もないのではなく、物質がぎっしり詰まってるから黒く見えるというのはなんともユニークですね。
そして、暗黒星雲の内部でもまた、重力によってガスが集まり、新しい星が生まれつつあります。
このように美しく個性的な馬頭星雲ですが、美しい馬の形も永遠ではありません。
数千年のうちには、内部や周囲で生まれた星々が放出する強烈な光や恒星風によって、このガス雲は吹き飛ばされて形を変えてしまうと考えられています。
私たちが見ている美しい馬頭の姿は、宇宙の時間スケールの中ではほんの一瞬ということなります。
さいごに

by Nano Banana
オリオン座は、単なる星の点の集まりではなく、生と死の営みが繰り返されるダイナミックな空間だということがわかります。人類の長い歴史の中で、人々は今我々が見ているのとほぼ同じ形のオリオン座を見上げてきました。しかし、考えようによっては、私たちはこの完全な形のオリオン座を見ることができる最後の世代の一つになるのかもしれません。
未来の人々がこの空を見上げた時、そこには一体どんな光景が広がっているんでしょう。次にオリオン座を見つけた時、少しだけそんな未来に思いを馳せてみるのも、面白いかもしれません。